2009-11

それでも問題が解決したわけじゃない

家本審判 J試合外れる ゼロックス杯で混乱「数ヶ月−半年以上」

日本サッカー協会は六日、判定をめぐり混乱が生じた一日のゼロックス・スーパーカップで主審を務めた家本政明審判(34)を、当分の期間Jリーグ公式戦の審判から外すことを発表した。松崎康弘・審判委員長は「いま審判をさせても(クラブの反発が予想され)クラブにも本人にもマイナス。冷却期間をおきたい」と話した。
会見には家本審判も同席。「ルールに反する行為は見逃せなかった」としたうえで、「(鹿島の)岩政選手に2回目の警告を与える時、退場の影響を考えて躊躇(ちゅうちょ)した。それで選手に不安感を与えた。その点を深く反省している」と釈明した。
松崎委員長は審判停止の期間を明言しなかったが、「復帰までは数ヶ月、半年以上かかるかもしれない」としている。協会が審判への措置を明らかにすることや、当該審判が釈明会見することは珍しい。今回の判定が招いた混乱が大きいことや、審判の考えを理解してもらう場が少なく、家本審判本人が判定の経緯を説明したいと申し出たことから、異例の会見となった。
家本審判は、「悪いプレーに目をつぶることがいいのか、自問自答した。正義感が強すぎたのかもしれない。選手への接し方にも至らなさがあった」と弁明した。松崎委員長は「岩政に2回目の警告を与えたプレーは間接FKとすべきだった。しかしPKのけり直しなど、判定は大部分が正しい。今回は処分ではない」との見解を示した。「試合をコントロールできなかったのは事実。しかし鹿島にも問題が多い」とも指摘した。

(日本経済新聞 2008年3月7日朝刊)



同じ会見のはずなのに、取り上げるメディアによって報道の内容が大きく異なるのはどうしたわけでしょうか。いろいろ見比べてみると、この日経の記事が一番客観的に会見の事実をきちんと伝えている気がします。

当初各メディアの第一報だと、家本氏が同席したこと、半年程度出場停止とすること、Jリーグには出場できないもののAFC杯には出場する、などかなり断片的にしか報じられなかったため、会見の真意が掴めなかったんですが、これである程度納得しました。
1日に発生した問題に対して1週間と待たずに審判委員会で結論を出し、当事者にも弁明の機会を与える会見を開いたこと、審判委員会が誤審があったことをきちんと認めた点は評価してよいでしょう。
また、圧倒的に国際審判の数が不足しているAFCの状況を考慮して、AFCからの要望があれば家本氏の派遣も認めた点は、AFCへの配慮と同時に家本氏にも実戦でのレフェリングの機会を奪わないような配慮もあったのでしょう。過去に何度も問題を起こしペナルティを受けたこともある家本氏ですが、昨年一年は概ね平均点以上の内容を残していました。1試合のミスで彼の将来を奪ってしまうことは正しい判断とは言えません。その点も評価できます。

ただ、いくつかの疑問も残りました。
先ず、家本氏の判定に対して岩政選手への2枚目のイエロー以外は問題なし、とした点。
個人的にはいくつか明らかにカードを出すほどのファールではないと思うプレーがあっただけに、審判委員会としての判断が本当にこれで正しかったのかは疑問です。
いろいろな要素を総合して最終的な処分を下すのはよいとしても、少なくとも審判員としての評価は純粋に技術的な要素のみで判断されるべきで、もしそこに「政治的要素」が加味されていたのだとすれば問題です。その当たりもやもやとしたものが残ったことは否めません。

また、審判に対する処分はこれで一区切りついたのでしょうが、一方で「鹿島にも問題あり」とコメントしながらも、リーグとして鹿島に対してなんのアクションも取らないとすればそれも問題でしょう。
当日の試合でも審判の判定に対して繰り返し抗議するなど鹿島側にも問題があったのは事実であり、訓告、厳重注意などがあって然るべきでしょう。
また、試合後にピッチに乱入した人間は、個人を特定した上で公式戦への来場禁止など明確な処分を下すことが必要です。不満があればああした行動をとってよい、などという間違った認識をサポーターに与えないためにもここは厳格な対応が求められます。
少なくとも先日の会見ではそのあたりまで言及していた様子は見えてきません。今後の対応に期待します。

また、今回の会見云々ではない構造的な問題として、「審判の質」を今後いかに高めていくかは重要なテーマです。
Jリーグ発足後、リーグの運営力、選手の実力などは着実にアップしてきたと言えるでしょうが、審判のレベルがそれに見合うほど上がってきたとは到底言えません。
自分自身スタジアムに足を運んだ際にも、明らかに誤審と思われる笛には何度も遭遇してきました。
審判の笛でゲームが壊れたと思われる試合もけして少なくありません。今回の家本氏に限らず多くの審判のレベルがリーグの発展に見合っていない状況が長く続いていることは、多くのファン、サポーターのフラストレーションの種であり、改善に注力して欲しいものです。

リーグ、協会としても審判のレベル向上のための努力は続けているようですが、結果がなかなか伴ってこないのは単にリーグ、協会の取り組みが不十分であることだけに起因した問題ではなさそうです。
SRクラスになれば相応の報酬が与えられているようですが、選手と比べれば格段に低いレベルですし(J1でレギュラーに定着しはじめた程度の20歳前後の選手でもこれくらいはもらっているでしょう)、誤審をすればマスコミ、サポーターから叩かれ、選手からは尊厳を傷つけるような発言をされる現状のレフェリーの置かれた環境は、職業として高いモチベーションを維持できるとは言い難い環境でしょう。
リーグ、協会としてのレフェリーの環境整備はもちろんのこと、選手や、ファン・サポーターまで含めて関係者全員の認識として、レフェリーとの信頼関係構築に向けた努力が必要でしょう。
「良い笛を評価し、悪い笛には毅然とした批評をする」客観的な評価を下す習慣が求められているのではないでしょうか。

また、現役のレフェリーの中にはまだサッカー未経験者が多く存在しているようです。
サッカー人気が定着したのがまだほんの15年程度の日本では、これも致し方ないのかもしれませんが、今後高いレベルでサッカーを経験してきた人材を多くレフェリーとして採用できるような環境整備は不可欠です。
何らかの理由でサッカー選手を諦めざるを得なかった優秀な人材がサッカー界で生きていく選択肢の一つとして、レフェリーが選ばれやすい環境を作り出すことが必要でしょう。
こうなってくると、ことは単にリーグだけの話ではなくなり、若年層などアマチュアも含めたサッカー界全体の課題となってきます。

今回の騒動を、現状を見直すよい機会と捉えてほしいですね。

テーマ:Jリーグ - ジャンル:スポーツ

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://hiezo.blog94.fc2.com/tb.php/96-ba2a4533
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

カレンダー

10 | 2009/11 | 12
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

プロフィール

Author:hiezo
僅か10万人の小都市でも全米一の人気を誇るチームを保有するグリーンベイ、3部4部リーグクラスのクラブでも100年以上の歴史を持っていたりする欧州サッカー。
そんなスポーツ文化が日本に根付くことを期待して、野球やらサッカーやらについてあれこれ思うところを書いてます。
何年続けても一向に上達しない文章力には辟易しますが・・・。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター